2022年12月の星空

- 揖斐谷にて -








冬型の気圧配置が続くようになると揖斐谷では星空は見られなくなる。クリスマス直前の寒波でまとまった降雪となったが、温暖化のせいか例年以上に湿った重い雪だった。これなら解けるのも早いだろうなと思っていると、正月前に一度ほぼ解けた。正月に雪があると冬が長く感じられるので、やれやれと胸をなで下ろした

2022年もまた天候に悩まされた年だった。11月の皆既月食・天王星食のように天候の心配をしなくてもいい天文現象は希有のことで、ペルセウス座流星群、ふたご座流星群ともに天候に恵まれずに、ほぼ全滅だった。撮影地点を求めて遠征も考えないではなかったが、今年のヒメボタルの無理がたたって健康に不安があった

12月27日の午後になって雲が切れ始めた。全惑星が集合する惑星パレードが撮れるかもしれない、と金生山まで車を走らせることとした。その前に夜の撮影に備えて雪が解けた林道に崩れてきた落石を除去し、枝を払って車が入れるように作業だけ済ませておいた
惑星の集合を撮るには日没直後の西の低いところまで望めることが第一なので、それを基準に考えると東天の火星までをカバーするところが思いつかない。残念ながら西天を主にして場所を選んで撮影した(惑星パレードはこちら

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2022年の最後の星空撮影は先月末に新規導入の SONY α7RM5 。既に本機の導入直後に簡単なテストを行いレポートしている。星空撮影に絞って簡単にまとめておく

1、α7RM4 からの画素数の変更はないが、本機ではRawの高感度ノイズリダクションが「弱」「標準」「切」が選べるようになった。これは前機種にはなかった設定で、同時にこれは前機種ではRaw段階で高感度ノイズリダクションが常時働いていることを意味していると考えられる。これが微光星を消したり、Gの星を発生させたりする一因となっていたのではないか、と疑われた

2、α7RM5 ではRaw「高感度NR 弱」「高感度NR 標準」では前機種と同様に微光星は消されているが「高感度NRを切」とすることで微光星も消えることなく写しとられている

3、以上を踏まえると星野撮影ではRawの高感度のノイズリダクションをoffとすること。その上で赤道儀を使って連続撮影したデータを加算平均コンポジット処理によってノイズを軽減させる方法が適当と考えられる

ではISO感度をそれほど上げずに赤道儀を使って長秒露光をしたらどうか。星野撮影と地上風景をそれほど写し込まない星景撮影限定ではあるがどうだろうか

12月も押し迫った27日の惑星パレード撮影が終わってから揖斐谷へ戻り星野撮影を行った。この夜の外気温は27日24時(28日00時)で1.1℃、雲量0の快晴だった。比較的湿度は低く、珍しく三脚が結露することもなく、最高の条件下で星空が広がった。一般にカメラの内部が高温になると熱ノイズが発生しこれが画質に悪影響を与えることが知られている。外気温が低く湿度が低いという好条件下での撮影だった

使用機材は α7RM5 + FE 14mm F1.8 GM で、開放から若干絞ったf2.0
クリエイティブルックはNT。例によってコントラスト、彩度、シャープネスは最低としている。これは撮影段階で意図せぬ強調が入らないようにするため。シャープネスがかかりすぎると恒星の輪郭が変に縁取りがついたりすることもよく経験する。これは避けたい
ISO800で40秒露光を連続撮影した後は、同じくISO800で40秒露光の1枚撮り。続いてISO感度を400まで下げて露光時間を80秒として撮影した。40秒露光、80秒露光は外付けタイマーを使わずに本機で新しく採用されたBULBタイマー設定を利用した。従来30秒までだった長秒間露光が900秒までカメラ内で正確に露光することができるようになった。ただしロックできないので、Bulbタイマー設定と連続撮影は併用できない。これはちょっと不便なので改良を望みたい

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撮影画像は上の通り

ぎょしゃ座から冬の大三角を淡い冬の天の川が横切っている。おうし座のアルデバランの北(上)、プレアデス星団(昴)の東(左)には存在感を増した火星が赤く輝き、その明るさはシリウスに迫っている。ふたご座の東(左)には宝石箱にも例えられるかに座のプレセペ星団がある
恒星に変な強調もかからず、とてもナチュラルな星空でこれには驚く。感度をそれほど上げないで撮影したおかげだろう。もちろん天体望遠鏡を使用した天体撮影ではもっと感度を上げて膨大な枚数を撮影し、後処理としてダーク減算と加算コンポジット処理は避けられないが、星野撮影ではあえて加算平均コンポジットを前提とした高感度撮影は必ずしも必要ではないと思う。またロスレス圧縮(L)でも撮影したが非圧縮Rawとの画質上の差異は感じられなかった

問題は画像のサイズが大きすぎることだ。もちろんデータ量も膨大になる
画像サイズは 9504 x 6336 (60 M)にも達し、一般撮影では明らかに(?)過剰。そこで常用としてロスレス圧縮(M)を使う方法が考えられる。これでも 6240 x 4160 (26 M) ある。フルサイズの一般撮影では2400万画素子前後が扱いやすいと感じている



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ISO400、f2.0、80秒×1枚、14mm、クリエイティブルック NT、LEE SP-31 ソフト №1使用、マニュアルWB、高感度NR off、長秒時NR on、Raw(非圧縮)、赤道儀で恒星追尾撮影

SONY α7RM5 + FE 14mm F1.8 GM


揖斐谷
2022年12月28日00時03分